その異音に、ルギアは目を覚ました。
『……?』
 目覚めたばかりだが、既に鋭く光る目を洞窟内に向ける。海底で見付けたこの巨大な洞窟は、どうやら大昔には人間が暮らしていたようで、神殿のような装飾が至る所に施されていた。
 ルギアはしばらくの間耳をすませる。しかし彼の心臓と海流の他に、音を立てるものは無かった。
『気のせいか?』
 そうだとすれば迷惑な話である。前回眠りについてからまだ数年も経ってない。ここ数万年をほとんど寝て過ごした彼としては、寝端を挫かれたようなものだったからだ。
 思う所が無い訳では無かったが、ルギアはまどろみの中に落ちようとする。しかしその耳が再び異音を捉えたので、目を開けた。
『上か?』
 ルギアは天井を見上げる。神を崇める紋様が刻み込まれている天井は、大昔と何も変わらないように思えた。
 しかしすぐ、微かだが天井が振動している事にルギアは気付く。そしてそれが段々と大きくなっている事も。
『……何かが来るな』
 岩と金属が擦れる音。耳障りなそれに顔をしかめながら、ルギアは警戒心を強くし始めた。
 ピキッと音がして、天井にひびが入る。パラパラと小石を床に落としながら、ひびは蜘蛛の巣のようにどんどん広がっていった。
 ルギアが後ろに下がりながら、その様子を見守る。そう簡単に崩れるとは思えないが、万が一洞窟が崩落した時のために、入口である水辺に移動した。


続く